おなかにはたくさんの筋肉が重なり合ってついています。
その筋肉が背骨や骨盤を動かして、おなかの安定や複雑な動きにかかわっています。
日常生活の中でぼくらが、体を伸ばしたり、曲げたりできるのは、これらの筋肉たちのおかげです。
上の体の中の骨格を見える化したイラストをみてもらうと分かりますが、おなかの前面には骨はありません。おなかの奥には背骨があって、骨盤とつながっています。
腹筋はこの背骨と骨盤、そして、肋骨につくので、筋肉を見る前にこれらの骨を確認してイメージできるようになっておきましょう。
おなかと骨盤を動かす筋肉は、腹筋以外にもあります。
例えば、背中についている脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)や広背筋(こうはいきん)といった筋肉、その他にもお腹の奥についている大腰筋(だいようきん)もお腹の動きに影響します。
ただ、すべての筋肉をいっぺんに覚えようとすると難しくなるので、今回は、
・腹横筋(ふくおうきん)水色
・腹直筋(ふくちょくきん)紺色
・内腹斜筋(ないふくしゃきん)緑色
・外腹斜筋(がいふくしゃきん)オレンジ色
・腰方形筋(ようほうけいきん)赤色
をみていきます。
おなかと骨盤の動きは、これらの筋肉が協力し合っておこなっています。
筋肉は、骨にくっついていて、縮んだときにその骨と骨のつなぎ目部分の関節を動かします。
背骨は椎骨という骨が積み木のように組み合わさってたくさんの関節をつくっています。ぼくらがお腹や背中を自由自在に動かすことができるのは、たくさんの関節がそれぞれいろんな動きをしてくれるからです。
ただ、関節自体は、自分だけでは動くことはできません。骨や関節が動くのは、筋肉のおかげです。
それでは、次は筋肉をみてみましょう。
おなかと骨盤を動かす筋肉を見てみよう!
腹筋は、全部で4つあります。
お腹の深い部分から、腹横筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋の順で重なり合ってついています。さらにその腹横筋の奥に、腰方形筋がついています。
たくさんあって、覚えるのは大変ですが、1つ1つゆっくり見ていけば、だんだんと分かるようになってきます。
まずは、腹横筋です。
腹横筋(ふくおうきん)
腹横筋は、お腹の一番奥についている筋肉です。コルセットのような形をしています。
筋肉には、筋肉の線維の方向があります。この方向に筋肉は伸び縮みすることで骨を動かしています。
腹横筋は、この線維の方向が横方向になので、それが名前の由来となり、腹横筋といいます。
筋肉がくっついている骨の部位を解剖学では、起始停止(きしていし)といいます。
腹横筋の起始停止
起始:肋骨、骨盤、背中側の筋膜(イラストの緑の部分)
停止:おなかの真ん中の白線(イラストの青の部分)
腹横筋は、肋骨、骨盤、背中側の筋膜(イラストの背中側の白い部分)から、おなかを横から包むようにつながり、お腹の真ん中の縦ライン(白線)までついています。
※筋膜とは筋肉、骨、内臓などを包む膜のこと。
つぎは、筋肉の働きです。
筋肉の働きのことを解剖学の作用(さよう)といいます。
腹横筋の作用
腹横筋は、おなかを横方向に包み込むようについているので、お腹を周囲からしめるような作用になります。
次は、この腹横筋が日常生活ではどんなときに活躍しているかをみてみましょう。
きついズボンをはくとき
おなかをへこませるときに使われる腹横筋。ウエストの細いズボンをなんとかしてはきたいときに使ってみましょう。
ほらがいを吹くとき
おなかから息を吐くような腹式呼吸や、ほらがいを吹いていい音を鳴らすときに筋肉が必要です。くしゃみ、せきをするときにも活躍しています。
次は、腹直筋(ふくちょくきん)をみてみましょう。
腹直筋(ふくちょくきん)
おなかの真ん中についている筋肉です。鍛えるとアイスモナカのような割れた形をしているとても有名な筋肉です。シックスパックといわれることもある筋肉です。
腹横筋は、筋肉の線維の方向が横方向でしたが、この腹直筋の線維の方向は垂直方向です。
腹直筋の起始停止
起始:肋骨の前面(恥骨)(イラストの緑の部分)
停止:第5~7肋骨(イラストの青の部分)
次は腹直筋の作用をみてみましょう。
腹直筋の作用
作用:肋骨と骨盤を近づけ、お腹を丸める になります。
この筋肉は、形が分かりやすくとても触りやすい筋肉です。
筋肉は知識で知るだけでく、触ったり、動かしたりしながら学ぶことで、より実感を伴ったリアリティを感じる解剖学ボディイメージをつくれるようになります。
次は、腹直筋が日常生活ではどんなときに活躍しているかをみてみましょう。
腹筋をするとき
おなかを丸めるときに使われるこの筋肉は、だれでも知ってる腹筋運動のときに活躍しています。
相撲をするとき
相撲などお腹を丸めてふんばるときも腹直筋は活躍しています。台車など重く大きなものを押すときにも活躍しています。
次は、内腹斜筋と外腹斜筋をみてみましょう。
内腹斜筋(ないふくしゃきん)と外腹斜筋(がいふくしゃきん)
腹直筋の上には、内腹斜筋と外腹斜筋がついています。この2つの筋肉はどちらもお腹を包み込むようについています。盾のような形をしています。
内腹斜筋と外腹斜筋の違いは、筋肉の線維の方向です。
腹横筋は横方向、腹直筋は垂直方向でしたが、内腹斜筋と外腹斜筋は斜め方向です。この2つの筋肉はクロスするように斜めについています。
それぞれ筋肉の線維の方向に着目しながら起始停止をみていきましょう。
内腹斜筋の起始停止
起始:骨盤、胸腰筋膜(イラストの緑の部分)
停止:第10~12肋骨の下側、腹直筋を包む腱膜(イラストの青の部分)
外腹斜筋の起始停止
起始:第5~12肋骨の外側(イラストの緑の部分)
停止:骨盤、腹直筋を包む筋膜(イラストの青の部分)
内腹斜筋・外腹斜筋の作用
この2つの筋肉は線維の方向が違うので、正確にみると作用にも違いがありますが、この違いは難しいので、今日はおおまかにまとめてみていきます。
これらの筋肉の作用はどちらも、
作用:おなかを丸める
になります。
上のイラストには、筋肉の縮む方向を矢印をつけているので、この方向を意識しながら動くと、2つの腹斜筋の違いが分かりやすいです。
次は、この腹斜筋が日常生活ではどんなときに活躍しているかをみてみましょう。
体幹をひねる腹筋をするとき
体を斜めにひねりながら行う腹筋の時に活躍しています。ウエストを引きしめたいときに最適です。
バットやラケットを振るとき
体幹をひねるスポーツをするときに、腹斜筋はとても重要な筋肉です。野球やゴルフ、テニスなどのスイングをするときに活躍しています。
それでは最後は、腹筋のもっと奥についている筋肉、腰方形筋をみてみましょう。
腰方形筋(ようほうけいきん)
腰方形筋は、お腹の奥についている長方形の筋肉で、にわとりのとさかのような形をしてます。
こんな形をした筋肉が腰についています。
腰方形筋の起始停止
起始:骨盤の上部(イラストの緑の部分)
停止:第12肋骨、腰椎の横の突起(イラストの青の部分)
腹筋と違って、腰骨の横の突起についているのが特徴です。
この筋肉が縮むと、この腰骨の横の突起を引っ張ることになります。
腰骨の両サイドについているので、左右の片側が働いた場合と、両方が働いた場合の2つの作用をみてみましょう。
腰方形筋の作用
作用1:片側だけが働くと、腰を横に曲げる 作用になります。
作用2:両側が働くと腰をまっすぐにして安定させる 作用になります。
最後は、日常生活の中でどんな時に腰方形筋が活躍しているかをみてみましょう。
ダンスで腰をフリフリするとき
チアダンスなどで体を曲げたり、腰を振ったりするときに活躍しています。片足立ちのときも働き、腰を引き上げてバランスをとってくれています。
腰を立てて座るとき
両側が働くと、腰を両サイドからひっぱってテントをはるように、腰をまっすぐに安定させてくれる働きがあります。
今回は、おなかと骨盤についている筋肉、腹横筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腰方形筋をみました。
おなかや骨盤の動きは、これらの筋肉が協力し合いながら行っています。
この部分の動きに何か問題が起きたときは、これらの筋肉や関節、骨を見える化できるようになると
・体のコンディショニング
・体をうまくコントロール
・体力をつける
・体を観察・分析
といったいろんな場面で役立ちます。
少しずつ学んで、ゆっくり見える化することができるようになりましょう。