ドアを開ける、荷物を持つ、洗濯物を干すなど、生活の中で僕らはいつも肩を使っています。
肩を動かす筋肉はたくさんありますが、いっぺんに覚えるのは大変なので、前回は体の表面をおおっている大きな筋肉、
・三角筋(さんかくきん)
・大胸筋(だいきょうきん)
・広背筋(こうはいきん)
この3つの筋肉をみました。
今回は、この筋肉の奥についている筋肉をみていきたいと思います。
・棘上筋(きょくじょうきん)
・棘下筋(きょくかきん)
・小円筋(しょうえんきん)
・肩甲下筋(けんこうかきん)
これらの4つの筋肉は、まとめてローテーターカフといわれることもあります。
ローテーターカフは、4つの筋肉のチーム名のようなもので、肩の動きにおいてとても重要な役割を担っています。
これから、これらの筋肉がついている部位と働きを見ていきたいと思いますが、その前に、これらの筋肉がつく骨を確認しておきましょう。
肩の中を解剖学でのぞいてみると三角形の平べったい形をした肩甲骨と細長い上腕骨があります。
この肩甲骨と上腕骨のつなぎ目の部分が肩関節です。
肩関節は、肩甲骨側が受け皿になってて、上腕骨側が丸くなっています。
関節は骨なので、関節自体は自分では動くことができません。関節を動かしているのは筋肉です。
肩を動かす筋肉を見てみよう!
まずは、棘上筋をみてみましょう。
棘上筋(きょくじょうきん)
棘上筋は、肩甲骨の背中側の突起の上についています。
肩甲骨の背中側には棘(トゲ)のような突起があり、この突起の上についているから、棘上筋といいます。筋肉がついている部位が名前の由来になっています。
筋肉がくっついている骨の部位を解剖学では、起始停止(きしていし)といいます。
棘上筋の起始停止
起始:肩甲骨の突起の上のくぼみ(イラストの緑の部分)
停止:上腕骨の外側(イラストの青の部分)
つぎは、筋肉の働きです。
筋肉の働きのことを解剖学の作用(さよう)といいます。
棘上筋の作用
作用:腕を上げる
同じように、腕を上げる作用がある三角筋という筋肉がありますが、この棘上筋は、上腕骨を肩甲骨側にひきつける方向に力を発揮しやすく、肩の関節を安定させてくれる作用が特徴的です。
この画像は、肩甲骨を外側から見ていますが、上の丸くなっている部分が上腕骨の受け皿になっていて、肩関節になります。
この肩甲骨の丸い部分に、上腕骨の肩関節側の丸い部分を引き付けることで、肩関節を安定させ、脱臼しないように働いています。
ちなみに、この棘上筋以外のローテーターカフも同じように、上腕骨を肩甲骨側にひきつけ、肩の関節が脱臼しないよううに安定させる働きがあります。
次は、棘下筋(きょくかきん)をみてみましょう。
棘下筋(きょくかきん)
棘上筋は、肩甲骨の背中の棘の上についてる筋肉ですが、この棘下筋は、棘の下についている筋肉です。
棘下筋の起始停止
起始:肩甲骨の後面(イラストの緑の部分)
停止:上腕骨の外側(イラストの青の部分)
次は棘下筋の作用をみてみましょう。
棘下筋の作用
作用1:腕を背中側に動かす
作用2:腕を外側にひねる
棘下筋は、腕を肩の高さまで上げた位置で使うと、腕を背中側に引く作用になります。
腕を下げた位置で使うと、肩関節を外にひねる作用になります。
次は、小円筋をみてみましょう。
小円筋(しょうえんきん)
小円筋は、棘下筋のすぐ外側につく筋肉です。めんたいこみたいな形をした小さい筋肉です。
小円筋の起始停止
起始:肩甲骨の後面外側(イラストの緑の部分)
停止:上腕骨の外側(イラストの青の部分)
次は小円筋の作用をみてみましょう。
小円筋の作用
作用:腕を外側にひねる
それでは最後は、肩甲下筋をみてみましょう。
肩甲下筋(けんこうかきん)
これまでみてきた棘上筋、棘下筋、小円筋は肩甲骨の背中側についている筋肉でしたが、肩甲下筋は肩甲骨のお腹側についている筋肉です。
肩甲下筋の起始停止
起始:肩甲骨の前面(イラストの緑の部分)
停止:上腕骨の前側(イラストの青の部分)
次は肩甲下筋の作用をみてみましょう。
肩甲下筋の作用
作用1:腕を腹側に動かす
作用2:腕を内側にひねる
肩甲下筋は、腕を肩の高さまで上げた位置で使うと、腕をお腹側に動かす作用(イラストの左腕)になります。
腕を下げた位置で使うと、肩関節を内側にひねる作用(イラストの右腕)になります。
これまで、ローテーターカフの起始停止、作用をみてきました。
最後は、日常生活の中でどんな時に活躍しているかをみてみましょう。
シャンプーするとき
腕を上げ、肩を動かしながらシャンプーを泡立てる動きは、4つのローテーターカフを使ってます。
腕を上げたり、肩をクルクルひねったりして頭を洗う時にローテーターカフは活躍しています。
ウチワであおぐとき
日常生活の中のどんなときにどの筋肉を使っているかが分かってくると、肩周辺にコリや痛みなどのトラブルが起きたときに、対処するべき筋肉を予測できるようになります。
そして、体の使い方を変えることで負担を減らしたり、コンディショニングをしたり、体力強化をはかったりすることもできるようになります。
今回は、肩の筋肉の中でも、肩関節の深いところについている(インナーマッスル)を中心にみてきました。
前回、学んだ肩を動かすアウターマッスル(三角筋、大胸筋、広背筋)と、一緒に学ぶと、さらに肩関節の観察や分析などがしやすくなるので、アウターマッスルをまだ見てない人はみておきましょう。