いつも僕らの体重を支え、立ったり座ったりするときに重要な役目をもってる股関節。二足歩行の人間にとって大切な筋肉がたくさんついています。
今回から2回に分けて、股関節を動かす筋肉を見ていきたいと思います。
股関節につく筋肉は、背骨、肋骨、骨盤、そして、大腿骨につくので、筋肉を見る前にこれらの骨を確認してイメージできるようになっておきましょう。
股関節は、骨盤と大腿骨のつなぎ目の関節です。
股関節を見ると、大腿骨の先端が丸くなり、骨盤の深いくぼみにはまるようについています。この形のおかげで関節がクルクル回り、脚をいろんな方向に動かせます。
今回は、この股関節を動かす筋肉の中のお腹側につく筋肉、
・大腰筋(だいようきん)オレンジ色
・腸骨筋(ちょうこつきん)紺色
・股関節内転筋群(こかんせつないてんきんぐん)赤色
この3つの筋肉をみていきたいと思います。
筋肉は、骨にくっついていて、縮んだときにその骨と骨のつなぎ目部分の関節を動かします。
それでは、筋肉をみてみましょう。
股関節を動かす筋肉を見てみよう!
まずは、大腰筋です。
大腰筋(だいようきん)
大腰筋は、太く力の強いパワー筋です。お腹の深い部分についていて、はかせの長い髭のような形をしています。
筋肉がくっついている骨の部位を解剖学では、起始停止(きしていし)といいます。
大腰筋の起始停止
起始:大12胸椎~第5腰椎(イラストの緑の部分)
停止:大腿骨の内側の突起(イラストの青の部分)
大腰筋は、12番目の肋骨、腰骨から、大腿骨の内側の突起までについていて、腰の関節や股関節をまたいでいます。
大腰筋が働くと、この筋肉が骨のついている部位をひっぱっるので、またいでいる関節が動きます。
筋肉の働きのことを解剖学では、作用(さよう)といいます。
大腰筋の作用
背骨側が固定されてる場合と、大腿骨側が固定されている場合の2つの作用をみてみましょう。
背骨側が固定された場合は、背骨側に大腿骨が引っ張られるので、
作用1:股関節を曲げる 作用です。
大腿骨側が固定された場合は、大腿骨側に背骨側が引っ張られるので、
作用2:股関節から前屈する 作用になります。
このように、筋肉の作用は、筋肉がついている部位のどちら側が固定されているかによって作用が変わります。
次は、この大腰筋が日常生活ではどんなときに活躍しているかをみてみましょう。
ボールを蹴るとき
サッカーで力強くボールを蹴るときにこの筋肉は活躍しています。大腰筋は太くて強い筋肉なので、スポーツで股関節を曲げるときに大きなパワーを発揮してくれてます。
次は、腸骨(ちょうこつきん)をみてみましょう。
腸骨筋(ちょうこつきん)
大腰筋と似たような場所についているので、大腰筋とセットで腸腰筋(ちょうようきん)と呼ばれることもある筋肉です。
しゃもじみたいな形をしています。
腸骨筋の起始停止
起始:骨盤の内側(イラストの緑の部分)
停止:大腿骨の内側の突起(イラストの青の部分)
次は腸骨筋の作用をみてみましょう。
腸骨筋の作用
作用:股関節を外側にひねりながら曲げる になります。
大腰筋と同じように股関節を曲げる作用がありますが、大腰筋と腸骨筋は、起始が違っています。
その違いが動きの違いをつくります。
大腰筋は股関節をお腹側に引きこむように曲げますが、腸骨筋は股関節を骨盤側に引き込むように曲げます。
筋肉ごとの起始停止の違いが分かってくると、似たような部位についている筋肉の動きの特徴もわかってきます。
この違いを知って、動きを使い分けることで、体のコントロール性を高めることができるようになります。
このことはすべての筋肉について言えることです。
次は、腸骨筋が日常生活ではどんなときに活躍しているかをみてみましょう。
日常生活の中でどんな時に筋肉をつかっているかを知ることで、生活の中で筋肉を意識できるようになるし、筋肉に対するリアリティが高まります。
そうすることで、体の中の観察・分析力が高まります。
腸骨筋はこんな時に活躍しています。
足を組むとき
股関節を外側にひねるときは、この筋肉が働いています。イスに座って靴下をはくなど、足を組むときに活躍しています。
次は、股関節内転筋群をみてみましょう。
股関節内転筋群(こかんせつないてんきんぐん)
太ももの内側にはたくさんの筋肉がついています。一つ一つみていくと大変なので、これらの筋肉はまとめてみていきたいと思います。
たくさんあるので、筋肉の群れということで、股関節内転筋群といいます。
股関節内転筋群は高波のような形をしています。
股関節内転筋群の起始停止
起始:骨盤の真ん中(イラストの緑の部分)
停止:大腿骨の後面(イラストの青の部分)
次は、股関節内転筋群の作用をみてみましょう。
股関節内転筋群は、実際は、恥骨筋(ちこつきん)、長内転筋(ちょうないてんきん)、短内転筋(たんないてんきん)、大内転筋(だいないてんきん)というたくさんの筋肉の集まりなので、筋肉のどの部分を使うかによって作用は変わります。
股関節内転筋群の作用
股関節内転筋群の前側がはたらくと、骨盤の前側に大腿骨をひっぱるので
作用1:股関節を前へ曲げる 作用になります
反対に後ろ側が働くと、
作用2:股関節を伸ばす 作用になります。
真ん中が働くと、
作用3:股関節を内側に閉じる 作用となります。
最後は、この筋肉が日常生活の中でどんな時に活躍しているかをみてみましょう。
トイレを我慢するとき
左右の太ももを近づけて、内股にするのがこの筋肉。トレイを我慢するとき、知らず知らずにつかっているかも。電車の座席で膝を閉じて座るときにも使われています。
他にも、
ツイストを踊るとき
ツイストのような内ももをすり合わせるようにクネクネする動きでも、この筋肉は活躍しています。しっかり使えば、太ももがひきしまるかもしれません。
今回は、股関節のお腹側についている筋肉、大腰筋、腸骨筋、股関節内転筋群をみました。
次回は、背中側についいてる股関節を動かす筋肉をみてみたいと思います。